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■■ 市民パネルの報告 及び 市民のまとめた報告書
 
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論点1:現在の技術で可能な遺伝子治療の持つ有効性をどのように評価するか。また、その将来性についてどのように考えるか。
論点2:遺伝子治療が持ちうる危険性についてどのように考えるか。
論点3:遺伝子治療は宗教的・倫理的問題を提起するだろうか。
論点4:遺伝子治療の実施に伴って出てくる具体的な問題をどう考えるか
 ※インフォームドコンセントについて
論点5:遺伝子治療に社会全体としてどう取り組んだらいいのか。
市民のまとめた意見書(補足)

論点1 現在の技術で可能な遺伝子治療の持つ有効性をどのように評価するか。また、その将来性についてどのように考えるか
有効性については、今回の専門家の説明からは、十分証明されたとは言い難い。しかし、将来的な可能性としては、利益を受ける患者がいると思われるので、一つの選択肢となる可能性があり、研究に値する。しかし、研究を進めるには何らかの制限が必要である。どの程度制限するかが一番大切な問題である。遺伝子治療の第一線の研究者は、分かっているメリット、デメリットをはっきりさせるなど、臨床治療の有効性について、将来の見通しを明らかにすべきである。
論点2 遺伝子治療が持ちうる危険性についてどのように考えるか
  1. 治療に使うウィルスのベクターは、発ガン性・病原性・不純物混入などについての危険性を持っている。ベクターとしてのウィルスは病原性をなくしたものではあるが、その起源が病原性のものである点に不安がある。
  2. 遺伝子を操作したためにおこる危険性は、今のところ誰にもはっきりわかってはいない。薬でいうところの副作用に相当するものの危険性もわからない。科学者はこれまでのところ、その危険はないようだと言っている。
  3. 遺伝子治療を推進する専門家だけが研究の審査・評価を行っている状況には不安が残る。研究者だけではない広い多面的な評価で補う必要がある。
  4. 現在の遺伝子治療は治験段階であり、その有効性・危険性・安全性が市民にはよく見えていない。技術の安全性を評価する第三者的な機能が必要である。
  5. 研究を推進することは有効性の追求である。危険性についての研究は行われてはいるが、さらに積極的に進められることが必要である。
  6. リスク回避のためには、広範囲にわたる情報の収集と開示が必要である。そうすれば、医療を受ける側と行う側の間の信頼関係を強くするのに役に立つ。
論点3 遺伝子治療は宗教的・倫理的問題を提起するだろうか。
  1. 遺伝子治療における倫理的問題はリスクの問題に還元されるか?
     倫理的問題は漠然とした問題として語られることが多いが、曖昧な不安ではなく、何が不安か、何が問題かをはっきりさせ、リスクの問題として捉える必要がある。しかし、倫理的問題はすべての不安がリスクに還元されるわけではなく、そうでない「曖昧な」不安も重要である。
  2. 生殖細胞を対象にした遺伝子治療がどのような形で倫理的な問題を引き起こすかをきちんと考えてみる必要がある。(現在の厚生省のガイドラインでは、生殖細胞を対象にした遺伝子治療は禁止されているが、)倫理的問題として生殖細胞をなぜ操作してはいけないのか?生殖細胞操作に関しては、まだ解明されていない知識の問題や、まだ解明されていない技術的な問題があるが、それらの問題が解決された場合に、介入に賛成の意見も、反対の意見もあった。
     現在の厚生省のガイドラインについては、おおむね賛成であるが、その場合でも、操作することについての是非は理由を明確にすることが必要である。その理由としては、遺伝子治療等に関しての知識を持つ者が、それを持たない他者の将来を決めることになりかねないし、次世代の価値観を今の世代が決めてしまう可能性があるということが考えられる。また、現時点での科学技術で解決がついているからといって、将来的に問題が起こらないということにはならない。 少数意見として、理由と効果が明快な場合、「悪しき生殖細胞」であれば操作してもよいのではないかとの意見もあった。ただし、その場合でも、病気の重篤さを配慮して、治療の可否を考慮するべきことは言うまでもない。
  3. 体細胞を操作することにも倫理的問題がないのか。
     専門家パネルの説明によれば、体細胞を操作することによって、生殖細胞に影響を与える可能性は否定できない。また、体細胞と生殖細胞の境目は必ずしも明確でない。したがって、将来的には問題が生じる可能性がある。
     もう一つは、「すべり坂効果」という問題がある。人の欲望によって、本来の目的を離れて、生殖細胞の操作にまで進んでしまうという可能性がそれである。この一つの対策として、ガイドラインをしっかりする必要がある。
  4. 宗教的な問題について
     遺伝子治療の技術開発については、特定の宗教的な意図が働いてはいけない。ただしこのことは、個人がその技術を利用してその治療を受けるかどうかに関して、その個人の宗教観が影響してはいけないということではない。
  5. 遺伝子治療と遺伝子治療の関係について
     倫理的・道徳的な問題として、遺伝子診断が遺伝子治療と切り離すことができないのではないかという意見が出された。しかし、両者をまとめて論じることによる混乱を危惧する意見もあった。
論点4 遺伝子治療の実施に伴って出てくる具体的な問題をどう考えるか
われわれは、この問いのなかの「具体的な問題」を、患者の視点から遺伝子治療をながめた場合に浮かび上がる問題と理解した。特に重要と考えられる問題は、インフォームド・コンセントである。以下、インフォームド・コンセントの意義およびその問題点についての見解を述べる。
インフォームド・コンセントの意義
インフォームド・コンセントの実施は、患者に対する病気の告知を前提としている。遺伝子治療の場合、現行の厚生省のガイドラインにもとづけば、インフォームド・コンセントの実施は致死性の疾患の告知と等しい。この点で「告知されない権利」の確保の必要性があると考える。そしてこの場合には当然、遺伝子治療が不可能になる。告知を前提としたインフォームド・コンセントの実施は、治療に関する自己決定を担保する条件である。しかし、「告知されない権利」をも確保するためには、告知方法・様式の自己決定の手段を工夫する必要がある。
インフォームド・コンセントの問題点

具体例にもとづく検討:われわれは遺伝子治療におけるインフォームド・コンセントの一つのサンプルを利用し、検討した。

  • 文体、用語の難解さ
     このサンプルは全体として非常に長く、専門的用語が多数使用されており、専門家ではない患者とその家族(代諾者)が容易に理解できるものではない。極論すれば、専門家のアリバイ作りとさえ疑われかねない。
  • 選択肢(治療・ケア等)の提示の不十分さ
     末期ガン患者の選択肢として、遺伝子治療以外に尊厳死やホスピスなどが考えられるが、このインフォームド・コンセントにおいて、それらが十分に提示されているとはいえない。

 

改善すべき点
  • 患者の視点の導入
     現行の厚生省ガイドラインにもとづけば、インフォームド・コンセントの文書は大学において原案が作成され、学内委員会の検討を経て厚生省の委員会において検討・承認されることになっている。このような仕組みにおいて、患者の視点がインフォームド・コンセントの文書に反映される可能性は低いと考えざるをえない。したがって、患者の視点を導入するための制度的仕組みあるいはチェック体制をつくることが重要である。特にこの場合、政府機関ではなく、第三者的機関の方がふさわしいと考える。
  • 「カウンセラー」の必要性
     医療の現場において、患者と医師の関係は対等とは言い難い。遺伝子治療を拒否すれば治療してもらえないのではないか、といった懸念が患者に生じている可能性は無視できない。したがって、インフォームド・コンセントの実施の場面においては、医師と患者を仲介するカウンセラーの役割をもつ人間が必要不可欠である。このようなカウンセラーには、治療のわかりやすい説明や、先にふれた尊厳死やホスピス等の選択肢の十分な提示と説明が期待される。
論点5 遺伝子治療に社会全体としてどう取り組んだらいいのか。

今後、遺伝子治療に社会全体で取り組む場合、以下の諸点に気を付ける必要がある。

  1. 情報公開について
     遺伝子治療について一般にはほとんど知られていないので情報公開を進めなければならない。その際、注意すべき点として、以下の指摘があった。
    • 世界的に情報を公開する必要がある。
    • 患者に理解可能な形での情報公開が必要である。
    • 個人が判断するために自ら探索可能な形での情報公開が必要である。
       そしてこのような情報公開の仕組みを有効に機能させるために、広い意味での生物に関する教育・啓発も重要である。
  2. アメリカへの依存と国産化について
     アメリカへの依存の問題ということに関しては、現在の日本の規制緩和の動きから見ても、今後世界は国境のない方へ向かっていくと思われるので、アメリカへの依存についてはあまり問題にする必要はないという意見があった。
     他方、対立する意見として、次のようなものがあった。現状では遺伝子治療に関する各種のパテントはアメリカが押さえている。したがって、遺伝子治療について欧米諸国の実験結果を参照せざるをえない。しかし、独自の安全チェック体制を作り出すためにも、技術面での独立性を維持するためにも、日本での基礎研究・応用研究の推進は今後とも必要である。
     また、特定国の遺伝子関連企業・資本によって技術開発の方向が左右されることに注意する必要性があるという意見もあった。さらに、資本の論理によって、遺伝子治療の技術開発及び拡大普及に影響が及ぶという懸念があった。
  3. 医療経済の問題
     この問題に関しては、次のような問題を検討すべきであるという意見が出された。
    • 少数者への遺伝子治療は高額治療となっているが、医学研究の予算の公平な配分という観点から問題はないのか。
    • より効果的な費用配分をどのように意思決定するのか。
    • ガンなどを発現させる環境要因の研究への資金投入と遺伝子治療への投資の関係の検討が必要ではないのか。
市民のまとめた意見書(補足)
皆様今晩わ、森田と申します。この会議の市民パネラーに決まりました時、わたくしの通っております大学のゼミの先生に「実はコンセンサスをとりつける会議というのは疑問があって、多様な市民の中の一人として市民の会議に出るつもりです」と話をしましたところ、「恐らくそれは少数意見だろうが、忌憚なく自分の意見を述べてきなさい」と申されました。そのようなわけで、ただいまから3回の市民の会議で討議致しましたわたくしの少数意見を述べさせて頂きます。
論点1 遺伝子治療の持つ有効性について

ジャーナリストの専門家パネルが指摘していたように、現時点で公表された治療結果は、明確なものが少なく、万一効果があると認められうるADA欠損症でも、世界で二例の成功例があったのみというように、遺伝子治療を勧めていくに十分な程の治療結果が出ているとは思えないのです。

又ガンに関して言えば、ガンはひとつの原因だけで生じるのではなく、いくつもの原因が次々に働いて生じるという、多段階発ガンであることは定説になっています。

このことより遺伝子治療の有効性を考えれば、ほとんどのガンは環境要因など遺伝的要因でない要素が重要であり、遺伝的要素の治療よりも、環境要素などの改善が必要で、これら本質的ポイントが見過ごされている点が問題であると思います。

論点2 遺伝子治療の危険性について
現在、岡山大学医学部が厚生省に申請中のアデノウイルスベクターは、野生化するということが、専門家パネルによって明らかにされました。この事は今までは「危険性」ということで論じられてきましたが、実際に起こるという事なので、危険性・リスクという具体的事例として評価基準の中にいれて考えるべきである事をつけ加えます。
論点5 遺伝子治療に社会全体としてどう取り組んだらいいのか。

医療政策について、政府がある政策を推進する時には、その根拠となる点や理由などを具体的に示す必要があります。しかし現在はそれが明らかにされているとは言えません。医療政策推進の具体的根拠についての情報の開示を求めたいと思います。

以上ですが、事務局の先生方には、この会議の報告書ができ上がります時には、数少ない意見も文書化して頂ける事をお願いしたいと思います。又この会議では誰がどの意見を述べたのかは明らかにしないというルールがありましたが、それを破ってしまいました事を、市民パネラーの皆様にお詫びしてマイクをおきたいと思います。有り難うございました。


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